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2002.12.09 (月)

「 慶應は福澤翁の精神を忘れ政治の思惑に屈服したか 」

『週刊ダイヤモンド』 2002年12月14日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 473回

「自分の面子にこだわって、李登輝さんの訪日を妨げた人がいる」

台湾総統府国策顧問の金美齢さんが、こう言って憤っている。

台湾人を弾圧した蒋介石総統下の国民党政権時代、その反国民党政権の言動ゆえに祖国に戻ることさえできなかった金さんは、自由を愛する精神で自らを支えてきた台湾人だ。李前総統は11月の慶應義塾大学「三田祭」に学生組織、経済新人会から講師として招かれたが、ビザが発給されず来日を断念した。これについては前号で触れたとおりだが、そのきっかけが面子という個人の“エゴ”だったというのだ。

事は「産経新聞」が、三田祭講演で李氏訪日の予定と報じた10月2日に遡る。日本の大学祭のなかでも最大規模の三田祭は、伝統的に学生の自主運営によってきた。自主独立を説いた福澤翁の教え、躍如である。

伝統に則して経済新人会の学生たちは、同じく学生が構成する三田祭実行委員会には講演企画を報告したが、大学当局にはしなかった。大学側が事情を知ったのは新聞報道においてだ。

あわてた、と思われる大学側は、なか1日置いた4日早朝、総合政策学部の小島朋之学部長(教授)が李氏側に、来日再考を促すメールを送った。メールのコピーを手に、金氏が語った。

「小島教授は、事前の連絡が皆無、準備期間もなく困惑、自分と国分(良成)教授の面子が失われると書いて、せっかくの、学生たちによる李前総統への招待を退けようとしたのです」

小島学部長が反論した。
「金氏が、私のメールを記者会見で暴露したのは失礼なことです。李氏側に私が伝えたのは4点です。通知のなかったことは、従前の李前総統と私の交流の実績からみて遺憾で、私の面子は失われたこと、時間的に今回は準備が困難なこと、ゆえに訪日は再考してほしいこと、将来のことなら時間をかけて準備、歓迎したいということです」

李氏の代理人である鐘振紘氏は、しかし、小島、国分両教授が李氏訪日阻止のため“手を尽くした”と述べた。
「李氏を説得しに、10月12日に台湾に来ると言われました。13日に二人揃って李氏に会わせてほしいと。後ろ向きの説得なら会わないと言って李氏は断わりました。お二人とも中共への気兼ねでしょう。ご苦労なことです」

小島教授は、訪台は自ら取りやめたと述べたが、一連の動きと同時進行で慶應の黒田昌裕常任理事は、経済新人会の学生らへの説得に当たっていた。

小島教授のメール発信と同じ10月4日、学生らが黒田教授に呼ばれた。以降、会合は数回に渡ってもたれた。

黒田教授は学生の自由意思を阻害するつもりはないとしつつも、李氏訪日で起きうべき事柄に、学生はどう責任を取るのかと繰返し問うた。中国の清華大学副学長から、同大と慶應の学術交流が影響を受けると告げられたと語り、慶應が中台双方と長年蓄積してきた学術交流が一時であれ頓挫すれば、どう責任を取るのかと迫った。

それでも説得に応じない学生に、ならば李氏の講演は学外で催すようにと教授は言い渡した。この段階で、今度は外務省が、ビザを出さないと宣言した。大学が抑え込めないとみるや、外務省が前面に出てきたわけだ。

黒田教授は、三田祭は大学と学生の信頼のうえに成り立つもので、自由には責任の裏付けが必要として、述べた。
「大学の自治と独立は、注意深く守らないと守り切れない脆弱さを内包しています。だからこそ、政治に絡むかたちでの動きを恐れたのです」

正論である。正論ではあるが、講演の中止こそが、学問の自由の、政治への屈服である。悪名高い外務省チャイナスクールにも似て、私学の雄の慶應が、福澤翁の自主独立の心を忘れ去ったかと問うものだ。

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「 慶應は福澤翁の精神を忘れ政治の思惑に屈服したか 」

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